相変わらずであるが行き詰まっている。

依然起業に向けていろいろなアイデアを試しているものの、しっくりくる兆しや一緒に組むCo-founderも見つかっていない状態だ。焦ってはいる一方で、自分の中での感覚も少し変わってきた。

まだARスタートアップでPMとして働いているが、PMという仕事に関しては執着みたいなものがなくなった気がしている。以前はSenior Manager of PMのようなPMの中でのマネジメントポジションくらいは経験したいとふと考えたり、PMのキャリアについて見ていたこともあったが、全く興味がなくなってしまった。多分今回スタートアップである種Head of Productとして、Product Visionの設定から細かなスプリントでのProduct Owner、要件定義からリリースに至るまで、一通りのプロダクトマネジメントフローを経験できたことが大きい気がする。裁量やインパクトが大きい中でどうプロダクトに落とし込んでいくか、ということは今も好きだしやってみたいという強い気持ちがここ数年はあった。特にMBAの時はそう思っていた。

ただ一通りやることで、その限界も見えてきたし、次の視座で見る重要性を感じている。とは言ってもPMの視点や価値は依然極めて重要なものだと思うし、僕自身もそれが好きだ。日本に帰ってきたとはいえ、そこを経験できたのはとても良いことだと思っている。今は直接繋がらなくても、この経験は向こう5年以内に必ず何かに生きるだろう。

次の視座、という観点に関してはやはり起業である。特に0-1の部分、そしてPMFさせるまでだ。ここは想像以上に難しいと感じている。もちろん立ち上げて調達するだけならまあなんとかなる。けれども、実際にPMFに向かって顧客の求めるものを作り上げ、お金を払ってもらう、というのは言葉では理解していても、行うのはとても難しい。自分自身スタートアップサイエンスなどを勉強しているので、MVPを作成してアジャイルに直して、みたいなことをやったりするが、実際にやってみると全くMust haveでないものが出来上がったりする。そして顧客理解、と一括りに言ってもかなりアート的な要素が強く、手探りで学んでいく必要がある。今まで日米幾つかのスタートアップで働いてきたが、きちんとPMF出来ているところはなかった。社会のニーズやEmerging technologyを用いた”カッコいい”スタートアップはあるが、PMFに達せず、事業としてのワクワク感のようなものはなかった。調達環境が良いので、調達は出来てしまい、それが故に人を雇えたりはしていたが、実際の事業、商売を行えている感覚がなかった。

やはり顧客視点、顧客理解だと感じている。結局商売の本質は困っている人を見つけ、その人の問題を解決して、対価としてお金をもらうということだ。カッコいいビジョンとか、最新のテクノロジーとかは会社側の都合であって、顧客の真に求めるものではない。そこのミスマッチがそういったPMFへの未達やGrowthフェーズに入れない原因なのだと思う。ただ、これは文字で書くとそりゃそうだ、と思うが実際に実行するのは本当に難しい。感覚スタートアップの中でも10社に1社も出来ていないのではないかと思うくらいだ。いやもっとかもしれない。因果関係が逆になるというか、自分の都合を顧客に押し付けることと顧客のニーズを自社にフィードバックすることの切り分けは想像以上に困難だ。顧客のニーズを自社にフィードバックと言ってももちろんただ言いなりになるわけではなく、本質的に求めているものを探り当てる、つまり顧客よりも顧客のことを考える必要がある、ということだ。

個人的に今までそこに関する解像度が少し低かったと思った。なんとなくヒアリングなどをしたりはしていたが、大枠は最新のトレンドに沿っていることの方が重要だと思っていたし、あまりきちんと人の話を聞くことをしてこなかった気がする。ただ、振り返ってみると真に必要で使われる機能はN1ユーザーへのインタビューから来ているということにも気づいた。MBA的な視点でペルソナやユーザージャーニーをなんとなく立てて、みたいなことで良いかと考えていたが、やはり0-1のPMFフェーズにおいてはカスタマインタビューでN1を深ぼることの重要性を身をもって体感した。

HaasのLean Launchpadなどではインタビューを数多く最初にこなす事を求められ、「嫌だな」と直感的に思っていたし、あの時はPMになることが先決だと思っていたので、授業自体をとらなかった。ただ、今起業を見据えて、PMFを目指すにあたってはこうしたN1分析こそが重要で、そこで得た知見を基にプロダクトを組み立てていかないと、今ある無数のPMF出来ていないリビングデッドなスタートアップのようになってしまう、と感じた。

PMの仕事でももちろん顧客理解は入るのだが、真の新規事業でない限り、既存のロードマップや顧客理解を引き継ぐ形になるので、それを一から再定義するのはかなり困難である。そしてその元に組織を再定義することはPM一人では出来ない。なぜならPMは他のメンバーに対してのマネジメント責任は持たないからである。あくまでInfluence without Authorityなのだ。なのでそれを真の意味で行うのはCEOである必要がある。そこに気づいたので、僕はPMでのキャリアに関しての興味がなくなってしまったのだと思う。

顧客理解、顧客視点が重要でそこの解像度を上げることから始める、という至極当たり前のことに気づけたことは良かったが、それを実践するのは難しい。今はクラウドワークスなどでお金を払ってインタビューをしたりしている。以前は友人たちに話を聞いていたが、それはそれで彼らの時間を奪うし、ターゲットとしても偏ってしまう。なので量を得るためにクラウドソーシングサービスを使うことにした。踏み出すまでに時間がかかったが、やってみると慣れてくる。昔、ゲノムの会社で働いていた時に2ヶ月で40人程度インタビューを行ったが、その時のことを思い出した。結局それだけインタビューしても新規事業には繋がらなかったが、このやり方が最も真の潜在ニーズを理解できる方法だとも思っている。

なので今はそうした顧客理解に苦心しているフェーズである。短期的に結果が出るわけでもないので、もしかしたらこの方法が間違っているのかもしれない、という恐怖と隣り合わせにある。早くこっちの道に進むべきだという北極星を求める焦りと、現実的に過ぎて行く時間を抱き合わせて今生きている。

一方であくまでこれらの商売の本質も実践として身体知に落ちているわけではないので、それを身につけたいという気持ちも強い。やはり多くの経営者、起業家は若い時からそれを身体知として何らかの形で学んでいる。スタートアップ経験でHead of Productのポジションはプロダクトの作り方の身体知は得たが、ビジネスの本質を学ぶ必要もある。PMF出来ていないスタートアップで学ぶ、かつそこの顧客理解の本質を理解できていないスタートアップにいることは、本質的には僕の時間の浪費になるのではないかとも思ってしまう。なので今の、取り組みが芽が出ないようであれば、向こう数年を投資して、そうした身体知を学びにいくという選択肢はある。

全ては2030年までに一流の起業家、経営者として、真に価値のあるプロダクトを作ってビジネスを行うという目的のもと動いているのだ。まだ時間はあるが、焦りも増えている。落ち着いて本質を見つつ前に進もう。

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